一人ぼっちの精神障がい者をなくせ〈No.5〉
37歳の時、彼女と別れた。
その何年か前に僕は医者から診察の時に統合失調症の告知を受けた。
僕はマンガでこのような病気の知識があったので、漠然と「やっぱりそうか」としか思わなかった。
真剣に考えるだけの能力に欠けていたのかもしれない。
39歳の時、調子を崩した。
その二年前から一人暮らしを始めていたが、その時に付き合っていた友達の助言が逆効果になってしまった。
「薬を飲まなくてももう大丈夫なんじゃないの」と言われて薬を飲むのがおろそかになってしまった。
一人で暮らしていた僕には正しい判断力はなかった。
その結果再燃してしまった。
次第に何も分からなくなっていき、自分をコントロール出来なくなり、家の二階から飛び降りてしまった。
両足を骨折してしまい、五ヶ月くらい休職してしまった。
その後取り敢えずは仕事に復帰出来たが、ある時会社に自分の病気のことを話したら、即刻退社勧告を受けてしまった。
父が、会社に残してもらえるよう一緒に上司に掛け合って懇願してくれたが、ダメだった。
結局、いじめや嫌がらせが激しく続き、退社することになってしまった。
今のように企業の障がい者雇用の義務もなくて、ハローワークに行っても仕事は見つからず、再就職は困難だった。
それからどうしたかというと、北海道の向谷地先生の噂を聞き先生の講演を受講した。
そこで鎌倉が社会福祉が充実していると聞き、戻って鎌倉の「地域生活サポートセンターːとらいむ」を知った。
「とらいむ」で僕は自分と同じ精神障がい者の知り合いが出来た。
意外に当事者の人数が多いので、驚いた覚えがある。
世の中に僕のような障がい者のために、社会制度の受け皿が出来てきたことに安心した。
少し気が抜けてしまった。
今まで、苦しくて苦しくてしょうがない心の病と、一人で闘ってきたからである。
読んだ本に拠れば、精神障がい者は人種に因らず、国民に因らず、同じ確率で発症するそうだ。
遺伝子の影響も少しあるそうだがそれが全てではない。
幾重にも重なるストレスが原因なのだそうだ。
素人の説明で申し訳ないが、この病気は薬の効力が治癒に大きく関与すると思われる。
長期間の薬の飲み続けは基本的には必要だ。
薬以外にも不眠症にも、食事管理にも気を付けなければならない。
回復のために、深いゆったりとした睡眠、又栄養のバランスの取れた食事は不可欠である。
以上、統合失調症と共に生きてきた、僕の人生の振り返りである。
菊池 初(仮名)